お茶をいれるという言葉にこだわり、あえてお茶を淹れると表記することにしました。

新聞や雑誌などでは入れる、あるいはひらがなでいれるになっています。常用漢字ではないからでしょうか、淹れるはあまり見当たりません。

そもそもお茶をいれるとはどういう行為を指しているのでしょう。
「美味しい水羊羹があるからお茶でもいれましょ」と言うとき、急須から湯呑みにお茶を注ぐのですが、このお茶をつぐ行為だけを言うのではどうもしっくりきません。お茶をいれましょには湯呑みにお茶を注ぐ行為だけでない別のニュアンスがあるような気がするのです。

まず、湯を沸かす。そして急須にお茶の葉を入れる。そこへ湯を移す。急須の中でできた飲み物(お茶)を湯呑みに注ぐ。こうしたいくつかの動作を経てからお盆に載せて、 さあ、お茶がはいりましたよ

確かに、湯を急須に移したり、お茶を湯呑みに注ぐ行為を表現するだけなら入れるで充分伝わります。しかしお茶をいれるということには、飲み物を湯呑みに注ぐ動作や行為だけではなく、お茶という飲み物を作る行為も含まれていると思うのです。

では、お茶を作るとはどういうこと?
お茶の葉を急須に入れて湯に浸してお茶の抽出液をとるという作業です。この作業を具体的に表現する漢字がです。には器の中で物(葉)が浸出するという意味や、水にひたすという意味があります。ですからこの字を当てて淹れるとすることでお茶を作っている様子を伝えることができます。

急須の中で茶葉が開きお茶の抽出液ができるまでには少し時間がかかります。しかし待つことが美味しいお茶にするポイントなのだそうです。この待つ楽しみをも、淹れるという表記で伝えたいという思いも込めました。

ところで、お茶についてはかの岡倉天心が英語で書き、今は日本語訳もされている名著「The Book of Tea」(和名: お茶の本)があります。ご興味のある方はこちらをどうぞ... 日本人はもとより、外国人にも読んでもらいたい本です。