釉裏金彩(ゆうりきんさい)という技法は、まず磁器の素地に絵具を掛け地色をつくり、その上に絵柄に切った金箔を置いて焼き付け、さらに透明釉を掛けて焼き上げるというものです。つまり地色の釉薬と透明な釉薬とで金箔をサンドイッチしているわけです。

いわゆる金彩という技法では、器の表面に直接、金粉や金箔をのせて文様を描きますが、釉裏金彩では金粉や金箔で文様をつけた上にさらに透明な釉薬で皮膜を作ります。透明な釉薬、つまりガラスを通して金色の絵柄を透かし見ることになるので、描かれた絵が柔らかくなるのでしょう。金が剥がれないというメリットもあります。

やきものは中国渡来の技法がほとんどですが、釉裏金彩は日本生まれの技法だそうです。九谷焼では、1961年頃、竹田有恒という方によって始められましたが、吉田先生はそれを受けて、より洗練された独自の釉裏金彩を完成されたのだそうです。

薄緑色の地色に金で描く花木は吉田先生のワンパターンともいえる組み合わせ。しかし、このワンパターンこそが吉田先生が長年追求してきた独自の釉裏金彩であり、先生の究極の美の世界なのだそうです。金箔との相性のよい地色を求め、やっと行き着いた色がこの薄緑色=緑と黄色の中間のような色なのだと伺いました。

金の美しさとは、眩しさと輝きこそだと思っていましたが、その眩しさと輝きを抑えてなお、いや、むしろ控えることでその美しさが上品で洗練されたものになっていることに気が付きました。上品であることはほんとうに美しい。こんな女性になりたいものだと言ったらみんな笑うね…