絵天井の間

1244年、道元禅師により開かれた曹洞宗大本山の永平寺(越前、福井県)。
大きな木々に見下ろされながら長い参道を歩き、通用門を通って受付へ。順路に導かれるまま進み、まず傘松閣(さんしょうかく)と呼ばれる建物に入ると。ほどなく大きな畳敷きの部屋に着きました。絵天井の間。その名のとおり、格子状に区切られた天井には、その格子の目の1つ1つに四季折々の花や鳥などがいずれも華やかに、また繊細に描かれていて圧倒されます。絵はどれも個性的であるのに、格子の黒と金の力強いコントラストの中に、規則正しく配置されている様から、全体として整然とした調和美を感じます。

坐禅や食事・就寝の場所である僧堂の横を通り過ぎたところで、響いていた読経の声が途切れ、昼のおつとめが終わったのか、仏殿から歩いて来られる修行僧の方たち。通り過ぎるのをそっと待ちます。

永平寺は坐禅修行の道場だといいます。朝、昼、晩のおつとめでお祈りをすることや座禅を行うこともちろん、日常生活そのものが修行なのだそうです。その修行のひとつとしてでしょう、掃除も大変行き届いており、廊下や階段、どこを見ても塵一つありません。そのことに感動すると同時に、また、この修行の厳しさが偲ばれました。

順路はさらに道元禅師を奉祀する承陽殿、ご住職が法を説かれる法堂(はっとう)へと続きます。七堂伽藍(しちどうがらん)というそうですが、永平寺にはいくつもの建物があります。僧堂や法堂のほかに、食事を司る場でもある大庫院、東司(とうす、お手洗いです)、浴室もあります。そしてこれら全体が修行の場であるのです。

大庫院の玄関正面には韋駄尊天(韋駄天、いだてん)が祀られています。韋駄尊天は、足の速い神様として知られていますが、禅のお寺では厨房を守る神様として祀られることが多いのだそう。この大庫院には、大きな「すりこぎ」がありました。このすりこぎ、触ると料理が上手になるのだとか。願いを込めて触ってみました。

順路の最後に山門を拝見しました。七堂伽藍の中で最も古いもので、勇壮な四天王が祀られています。この山門は大変神聖なもので、一般の観光客は通り抜けることはできません。永平寺に修行される修行僧の方でも入門するときと修行を終えて下山されるときの2回しか通ることができないのだそうです。この厳格さからもその修行の厳しさが伝わってくる気がしました。

少し離れたところに、杉の大木に抱えられるように佇む、美しい唐門があります。この唐門は、永平寺の貫主が赴任される時や皇室からの使者を迎える時などの、ごく限られた時だけ開かれると言います。平成28年からは大晦日の日は一般の方もこの門を通れるようになったそうです。大晦日の日は除夜の鐘も響き、特別な日になります。

さて、永平寺の修行は大変なものであろうとひしひしと感じたところですが、実は永平寺では、1泊2日で修行の体験もできるそうです。座禅や写経の体験はその場で申し込んで体験も可能だとか。ちょっと日常から離れてこうした体験をするのもよいかもしれませんね。