俳句を捻るという言い方があります。俳句を作るということです。詠むともいいますが、捻るというとなぜか高尚な感じがして、ちょっと言ってみたい言葉です。「ひとつ俳句でも捻ってみましょうか」なんて。

そもそも捻るとはどういう意味なのか。本棚の岩波の国語辞典第四版で調べてみました。

ひねる【捻る】

  1. 指先でものをつまみ、その部分を回す、軽くねじる。「栓をひねる」「鳥をひねる(=絞め殺す)」
  2. やっつける 「軽くひねってやろうか」
  3. 少し向きを変える 「首をひねる」(転じて「どうかなあと疑う」意にも)
  4. (頭をひねって)工夫する ㋑あれこれ考えて(詩歌を)作り出す 「俳句をひねる」
  5. すなおな筋道でなく変わった趣に、わざとする 「ひねった出題」

なるほど、俳句を作る時にあれこれ考えをめぐらしている様を表現する動詞ということでしょうか。

俳句を作るには、「五・七・五の17文字で作る」そして「季節を表す季語を入れる」というこの2つのルールしかないのですが、いざ作るとなると、文字数を指折り数え、感じたこと伝えたいことを託せる季語はどれがいいだろうかと悩みます。

そしてなんとか形になったら、推敲(すいこう)する作業も必要です。文法的な誤りがないか添削したり、語句を入れ替えたりして練り直すのですが、これも難儀です。一句出来た、と自分が思えるまで四苦八苦が続きます。捻りっぱなしです。

でも、捻るにはどうも正しい方向と正しい力の入れ具合がありそうです。

冬のある日、他家の庭に咲いていた一輪の薔薇。透明感があり、まるでガラス細工のよう。陽の光を受け輝いて見えました。この美しさをなんとか句にしたいと、あれこれ言葉を吟味して捻りだした句がこれです。

煌めきてガラス細工の冬の薔薇

ところが、「ガラスは本来きらめくものなので煌めきては不要」、という評をいただき、考えつくして見つけ出した「煌めく」という言葉はボツ…

しかし別の句は、「直すところなし。よくできている。」との言葉をいただいたのです。

野良猫と睨めっこする日向ぼこ

こちらは、散歩中に遭遇した野良猫との一場面。毎月末に開かれる句会には3句発表しなければなりません。あともう一句、あともう一句と焦っている時に散歩中にひょいと浮かんだ句でした。

本人は気の利いた俳句を作ったつもりでも、ひとつの発想に囚われすぎて基本的な言葉選びを誤ってしまったり、推敲でひねくり回すとなにを言いたかったのか分からなくなってしまう。ただ無鉄砲に捻るだけでは句にはならないのです。

シンプルに。素直に。奇をてらわずに。ちょいと一句捻りましょうか。