目には青葉山ほととぎす初鰹という句がぴったりの季節になりました。 木々の若葉はみずみずしく、差し込む光はキラキラと眩しくて。そして吹き抜ける風にはどことなく若葉の香りを感じます。なんとも心地よく爽快な気分になる季節、初夏を迎えました。

           風をはらみてシーツ白帆に夏来る(なつきたる)     真理子

良く晴れた日、大きなシーツを干したところ、風にシーツが煽られてまるでヨットの帆のように広がりました。ふっと潮風を感じた瞬間を詠んでみました。季語は、夏が始まる兆しを表わす夏来るですが、吹き抜ける風そのものを季語にしたら、また違った句が詠めたかもしれない…。というのは、歳時記を繰っていたら、夏の風を表わす季語がたくさんあることを知ったからです。

たとえば、あいの風は、4月~8月ころ、日本海沿岸に吹く北または東からの風のこと。

新緑、若葉のころに吹きわたる爽やかな風は、薫風(くんぷう)

薫風よりやや強い風になると、青嵐(あおあらし/せいらん)。

夏の風は、立夏以後の夏に吹く風4のことですが、涼しい風もあれば暑苦しい風もあり、梅雨どきの重く湿っている風のことにもなります。

ちょうど今の時期、初夏5月限定の、麦の秋風(むぎのあきかぜ)なんていう季語もあります。麦秋(ばくしゅう)の頃(初夏。秋ではありません。刈り入れの近づいた麦の穂が黄金色に輝いて見える時期)に吹き渡る風のこと。麦が熟れた黄金色の畑にさっと吹く風。5月のカラっとした日の、気持ちよい風のこと。

梅雨どきの6月限定のいなさ。南東から吹く強くてなま暖かい風のこと。

そして盛夏を迎える頃、梅雨明けの明るい空に吹く風のことを、白南風(しろはえ)

夏の季節風で、もともとは漁師、船乗りの言葉だった南風(みなみ)なども季語になっています。

風が吹いていないときにも、風にちなんだ季語があります。朝凪(あさなぎ)夕凪(ゆうなぎ)風死す(かぜしす)なんていうのもあり、盛夏の頃、風がぴたりとやみ耐え難い暑さになる苦しさが想像できます。

夏の風の様々な表情が季語に取り込まれていて、風向きや強さ、吹く時期や時間を具体的にイメージできるのはもちろんのこと、風の匂いや色、温度や湿度、そして風を感じる感覚をも刺激してくれます。

夏は風の季節。これから梅雨、そして盛夏へと向かいます。鬱陶しい梅雨の日々も、うだるような暑さの日々も、その時その時に吹く風の表情と感覚を味わうことにしよう。

オランダカイウ(Calla Lily)

M.K.