立てばシャクヤク…

立てばシャクヤク、座ればボタン、歩く姿はユリの花 ? 美しい女性の姿を花に例える言葉で有名なシャクヤクが、先週のお花のおけいこの花材でした。「やっといい芍薬が手に入ったのよぉ」と嬉しそうな先生。なるほど、細い茎はしなやかで、すらっと伸びた先端にまんまるのつぼみがつき、葉は小ぶりでイキイキしてます。

芍薬(しゃくやく)の開花時期は3月から6月なので、本格的な夏になる前、梅雨時のこの時期を逃すと今年はもうシャクヤクには会えずじまいになってしまいます。おりおりの木々や草花を生けて季節感や自然を味わうのがいけばなの楽しみのひとつなのですが、木も花も生ものなので、1度旬の花材を逃すと次回またというわけにいかず、今年はとうとう桃を生けずに春が終わってしまったなんていうことになるのです。syakuyaku1.jpg

そんなわけですから花材の調達には先生のご苦労があります。
「この頃、花xxさん(花屋さんの名前)あんまり芍薬置かないそうなのよ。」最近どうもシャクヤクの売れ行きがよくないらしく、花屋さんも仕入れを控えているとのこと。理由ははっきりとはわかりませんが、水上げが悪そうだからなのか。つぼみのまま咲くかなぁと不安になるからなのか。それとも、モダンな洋花が好まれる昨今、どちらかというと和風でクラシックな雰囲気のシャクヤクは敬遠されてしまうのでしょうか。
syakuyaku2.jpg立てばシャクヤク、座れば… という例えもこの頃は「なにそれ?」と首を傾げる人が多くなったと聞きます。

細くすらっと伸びた茎に大きくて麗しい花をつけるシャクヤクは美しい女性の立ち姿、横に張った枝にあでやかに咲くボタンの花は優雅に座っている女性の姿を連想させ、そして風になびきながら凛と咲くユリの花に美しく歩く女性の姿を重ねたのは、ひと昔前のこと。古き日本女性の美しさは現代では通用しなくなってしまったというのでしょうか。古きよき時代のことだというのでしょうか。それじゃぁ今どきの美しい女性はどんな花に例えたらいいのかなぁと、通りかかった花屋さんの花をしばらく眺めています。