若き機織り職人さんの話

 火曜日の夜11時台は、NHK教育テレビで放送している「トラッドジャパン」という英語番組を見るのですが、7月14日は、そのまま見ていたら、「あしたをつかめ・平成若者仕事図鑑」という番組をやっていました。若者向けの、いわば就職ガイド。

 この日のテーマは、「機織り職人」。機織り職人をテーマにするなんて、とてもめずらしいので、思わずすぐに録画しながら、身を乗り出して見ていました。紹介されていたのは、京都・西陣、福岡・博多などと並んで、かつては隆盛を誇った関東の織物の産地、群馬の桐生で、老舗の織物会社に勤めるキャリア3年目の若き職人さん。

 服飾系の大学に通って、ちゃんと着物までつくった(多分、手織り)経験をもつ彼女が、なかなか受け入れてもらえなかった織物会社に入社して、いまでは若い感性を生かした着物のデザインも任されるようになって……。日頃は、着尺(着物の生地のこと)を織る大きな機械の管理、調整という仕事に従事されていますが、きっと自分がデザインした生地ができあがったら、さぞかしうれしいことでしょうね。

 この会社では、紋紙という、織りの情報をパンチの穴で伝える紙を織機に読み込ませることで、生地ができあがっていくのですが、もちろんそのスピードたるや、1日半かけて1着分織り上げるというのですから、人間の数十倍です。この紋紙を使う手法はもともと人間がやっていたことを紙に替えたわけで、フランスのジャガード織も同じ仕組み。コンピューターのもとになった機械、ともいわれています。いまでは着物の需要がどんどん下降線をたどり、こうした織機もむしろ絶滅危惧種かもしれません。

 着物の需要が減っているから生産もそんなにしなくていい。すると、この業界に関わる職人さんたちも減っていきます。西陣あたりでも、昔に比べれば、後継者はどんどん減っているそうです。確かに、需要(仕事)がなければ、食っていけない……そうなれば、職人のなり手が減るのは当然のことです。

 でも、この番組で紹介している職人さんをはじめ、まだまだ日本各地に、粘り強く着物や染織を守っていこうとしている人たちは、確実にいます。ま、この私ですら、自分用ぐらいなら、着物をつくろうと思っているくらいですから、日本の染織文化、そうやすやすと諦めてはいけません。こうした若い人たちが職人として十分やっていけるようにするためにも、着物を着るチャンスを増やすこと、日本の染織文化を再認識することなど、まだまだやれることはあるような気がします。