沖縄の布 ― 芭蕉布

 このほど沖縄を訪ねてきました。沖縄は日本と中国、また東南アジアの国々との間に位置し、重要な交易の地として栄え、独特の文化を育んできた地です。
やはり印象的だったのは首里城。15世紀から450年ほどこの地を支配してきたのは琉球王国ですが、この王国によって建設され、現在は世界遺産にもなっています。

朱塗りの奉神門をくぐれば、赤い絨毯のように真っ直ぐに正殿に向かう通路と整然と描かれた白い線が印象的な広場、そして龍を冠いた鮮やかな正殿が目に飛び込んできます。壮大な建築ときらびやかな装飾品などから、当時の琉球王国の繁栄振りと王族の力が偲ばれました。 首里城

 さて、沖縄には琉球ガラスや壺屋焼きなどさまざまな工芸品がありますが、特筆すべきはやはり布でしょう。琉球王国の王族のために発展していった首里織や、読谷や八重山など各地で織られたミンサー織、また芭蕉布など。

芭蕉布のバッグ、私が残波岬近くで購入したもの芭蕉布はこの琉球王国が繁栄する前から存在していたといいます。バナナと同じ仲間である糸芭蕉という植物の皮を原料にして、これから糸をとり、織り上げていくといいますが、栽培から乾燥等を経て手作業で布にしていくまでには膨大な手間と時間がかかります。布の分類で言えば、平織の絣。芭蕉布は「トンボの羽」にもたとえられるほど薄く軽くて風通しがよいので、暑い沖縄の夏を過ごすにはこの着物が絶好、着物も沖縄流にゆったりと着れば、風をはらんで涼しく過ごせます。

 繊維の質によって、着物のほかに、ネクタイやショール、コースター、写真のようなバッグも製作されています。写真は私がお土産用にと購入したバッグ。清涼感が夏に持ち歩くにはよいと思います。ワンピースが買えたらもっと涼しく夏をすごせたかもしれないけど…。

 前回取り上げた小千谷縮みも非常に制作に手間のかかる貴重な布ですが、かつては沖縄中で生産されていたこの芭蕉布も、現在は大宜味村喜如嘉で細々と生産が続けられている「幻の布」とも呼ばれるほど。こちらも原材料を糸に仕上げていくまでの工程に非常に手間がかかります。一反の芭蕉布を得るにはて200本の糸芭蕉が必要で、その栽培には2?3年の年月がかかる。そしその糸芭蕉の皮を剥ぎ(苧剥ぎ)、木灰汁で煮(苧炊き)、原皮をしごき(苧引き)、そこから1本1本繊維を手繰って糸にしていく(苧績み)とざっと端折って説明しただけでその膨大な時間と手間に驚きます。そしてこれを染め、織り上げて芭蕉布が完成するのです。