世界遺産に指定されている日光山内の日光東照宮では、経年による傷みの修理を実施中ですが、そのうち陽明門が4年に渡る修理を終えてこの春から公開されています。梅雨の合間をぬって日光東照宮に行ってきました。

長い表参道を歩いて一ノ鳥居、表門を通り抜けて少し行くと神厩舎(しんきゅうしゃ)。ここは神様に使える神馬をつないでおくところですが、猿が馬を守護するという言い伝えがあることからか、その長押(なげし)には猿が彫刻されています。有名な三猿です。ライフステージごとに描かれているこの三猿の幼少期が「見ざる・聞かざる・言わざる」。幼いうちは純真で周囲の影響を受けやすいから、世の中の悪いことは見聞きしない、悪い言葉を話さないように。良いものを身に付けておけば正しい判断ができるようになるという意味だそうです。この三猿も、漆を塗り直して再び鮮やかに彩色されていました。

御水舎のところを曲がると、唐銅(からかね or とうどう)鳥居が現れ、その向こうに陽明門が見えてきました。夜であればこの唐銅鳥居と陽明門の中心を結んだところに北極星が見えるそうです。さて、いよいよ陽明門。人が沢山でうまく写真が撮れませんでしたが、高さ11メートルの大きな門に、所狭しと彫刻が配されています。いずれも可能な限り創建当時の技法に沿って修復され、美しく輝いていました。想像上の生き物の麒麟(きりん)、目貫きの竜、唐獅子、また子どもたちの遊ぶ様子を彫り出した唐子遊びや故事逸話に基づくものなど、いつまで見ていても飽きません。それにしてもこれほどの彫刻が飾られていて、よく倒れないものだと思いますが、うまく力を分散させ、また斗栱(ときょう)組みという組み方で大きく張り出した軒を支えているそうです。

さらに先、唐門へ。色彩あふれる陽明門とは打って変わったシンプルな色使いの門です。しかしその彫刻は唐木寄木細工による繊細なもので、門には昇り龍と降り龍、また台輪(だいわ)や虹梁(こうりょう)には七福神や七賢人、中国故事などの彫刻が施され、その卓越した技に目をみはります。

拝殿は内部の拝観は可能でしたが、今回はシートで覆われていて残念。気を取り直して東回廊に行くと、いたいた、かわいい眠り猫。牡丹の花咲く下に日の光を浴びて子猫がうたた寝をしているということで、「日光」に因んでいるともいわれています。

最後は薬師堂。中に入ると、大きく描かれた天井の竜の絵に圧倒されます。鳴き竜です。案内してくださったお坊さんがほんの少し違った場所で拍子木を打った時には乾いたカーンという音が聞こえるだけでしたが、竜のちょうど顔の真下で拍子木を鳴らすと鈴を転がすようにエコーがかかって響き、まるで本当に鳴いているようでした。

日光東照宮にはここではご紹介できなかったものがまだまだ沢山あります。是非一度、訪れてみてはいかがでしょうか。