古来、日本では漆器を日常に広く使用してきました。赤や黒の漆で塗られた漆器をひときわ華やかに彩るのが蒔絵です。金や銀、またその他の色粉で花や木、鳥などの生き物が描かれると漆器は一段と美しさを増すようです。

その蒔絵を多数集めた「MAKI-E 蒔絵・美の万華鏡展」を東京富士美術館(東京都八王子市)に見に行ってきました。同館所蔵の蒔絵の作品100点などが展示され、見応えのある展覧会でした。今回、アートスコープ(単眼鏡)が会場のあちこちに置かれていて、それを利用して作品を細部まで鑑賞することができ、大変興味深い体験ができました。「藤鶏花見蒔絵印籠」は、芝山細工(貝や石などの素材を削り組み合わせ、レリーフ状の彫刻を施し、それがぴったりと嵌るような溝を漆面に彫り、素材を埋め込んでいく象嵌の細工)によるものですが、これをアートスコープで覗くと、1つ1つ埋め込まれた藤の花の花びらがきらきらと煌めき、また、鶏のトサカの色もひときわ鮮やかで、息をのむほど。

「竹張源氏蒔絵提重」(写真は同展ちらしより抜粋)を肉眼で見た時には気付かなかったのですが、アートスコープを通して観ると、提重(さげじゅう)の外側の箱の角の部分(写真の矢印のところ)にも細かい紋様が描かれていて、とてもびっくり。源氏物語をモチーフにした蒔絵は言うまでもなく、こうした細部に至るまで、どこまでも気を抜かずに制作にあたった人々の職人魂に魅せられます。

また、この美術展では、ヘッドマウントディスプレイによって重要美術品である「鹿秋草蒔絵硯箱」を鑑賞することができます。ゴーグルのようなこの器具を装着すると、まるで硯箱(すずりばこ)の中に入っていくような気分、頭の動きに合わせて映像も動くので、観たい部分を詳しく観られます。自分が小さくなってこの鹿たちの物語に入り込んだような気持ちになってワクワクしました。

武具や婚礼調度なども展示されるなど数多くの華やかな蒔絵の美しさに魅せられ、また、いつもとは一味違った新しい楽しみ方も発見し、充実した時間を満喫できました。

東京富士美術館:http://www.fujibi.or.jp/
(竹張源氏蒔絵提重、鹿秋草蒔絵硯箱などの同館所蔵の漆工コレクションの一部も、このホームページの中で紹介されています。)
MAKI-E 蒔絵・美の万華鏡展:2017年4月1日~7月2日(月曜休館)
入場料金:大人800円、中高生 500円、小中生 200円
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